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横田空域と羽田新ルート [├雑談]



「返還は求めない」

上のマップは一連の「那覇空港」記事の使い回しで、発着数増加を狙った羽田新ルート案です。

ほぼ南北に走る紫ラインの西側が横田空域なのですが、

ご覧の通りでA滑走路着陸コース(マップの赤ライン)がどうしても一時的に横田空域内を飛行することになります。

このルートは「南風好天時」のものなんですが、

「南風悪天候時」にはC滑走路への着陸コース(青ライン)も横田空域の内側に入ることになり、

それに伴ってA滑走路着陸コースは更に横田空域の奥深くに入ります。

民間機が横田空域を飛行するには、飛行の度に申請をする必要があり、

しかもその申請は必ず許可されるという保証がありません。

このため横田空域内を通過する航空路、飛行経路を設定することは現実的でなく、

これまでは、横田空域を迂回する措置がずっと続けられてきました。

この羽田新ルートではその慣例を打破すべく米側と協議しています。

そしてその協議の過程で(も、もしかして、10年ぶりの部分返還来る? 来ちゃう?  +(0゚・∀・) + ワクテカ + )

という期待があったのでした。


ところが東京新聞2017年12月10日付朝刊(下記リンク参照)によれば、件の羽田新ルートに関連して

「国交省管制課と外務省日米地位協定室は本紙取材に、『横田空域の削減(返還)は求めない』との見解を示した」

とありましたΣ(゚Д゚;)

オイラは一連の「那覇空港」記事で、

「日本側としては横田空域の返還を求めているが、米軍は返還に難色」という趣旨のことを書きました。

横田空域の返還を求めるのが日本のスタンスであるとした根拠は、

日米両国政府による横田空域返還についての協議がこれまで長年続けられたこと、

結果として7回の一部返還が実現していることが挙げられます。

防衛省の公式サイト内でもこの返還交渉に関して、

「横田空域の全面返還の実現に向けてこれまでも鋭意努力してきたところであり」

と明記されています(下記リンク参照)。  

ところが今回の日本側の交渉スタンスは、新ルートのうち横田空域に入り込んでしまう部分の返還を求め、

日本の管制空域にした上で、羽田到着機を飛行させるのではなく、

横田空域の設定はそのまま残し、「米国の管制空域内の飛行を許可させて頂けないでしょうか」というものです。


羽田発着便の中には、横田空域を大きく迂回して時間と燃料を余計に使っている便が現にたくさんあることは、

「那覇空港・4」で書いた通りです。

そしてその余分な燃料と時間の代償を払っているのは、結局のところ利用客。

国交省の担当者は「〇八年の削減で当面の航空需要には対応できており」としており、

米側も、「これ以上の返還は難しい」

「横田空域のいかなる部分に関しても、永久的な返還の実質的な交渉は行っていない」

としています。

諦めの悪いオイラは、日本側の「横田空域の削減(返還)は求めない」とは、

今回の羽田新ルートに関係する空域に限っての話であり、

「最終的な全面返還に向け、粘り強い交渉を継続してゆく」

という従来の大きな流れは続いているのだと思っていたのですが、

日米双方の言い方からすると、そうでもないみたいです。

日本はこれまでずっと続けてきた返還交渉をいつの間に諦めちゃったんでしょうか。

日本側は横田空域返還の必要性を感じておらず、米側も返還する気はさらさらない-

なんかもう横田空域は戻ってきそうにないですね。


ハンドオフ大変

これも一連の記事で書きましたが「横田空域」とは、

「米軍が航空管制権を有している空域(横田ラプコン)」のことなので、

羽田新ルートを飛行する旅客機は、横田ラプコンを飛行するほんの短い時間だけ、

米軍の管制空域を飛行することになります。

管制空域が変わったら、必ずその空域を管制する管制官と交信しなければならないため、

この場合、「日本の管制との交信」→「米軍の管制との交信」→「日本の管制との交信」

と、交信を次々切り替えなくてはなりません。

魔の時間帯に煩雑な作業が増える上に、

なんかハンドオフの手順を踏んでる間にもう横田空域出ちゃいそうな気がするんですが。。。

そしてこれは日米双方の管制官にとっても、ピーク時には45秒ごとに列をなしてやってくる旅客機に対し、

次々とハンドオフを繰り返すことを意味しています。

これについては、日本側で一元的に管制する案も含めて米側と協議をしているのだそうです。


横田空域の必要性

どうして米側は横田空域を返還しないのか、その理由については、

米側の「軍事上の理由により」とか、「日米地位協定でそう決まっているから」

とかいう以上に具体的な説明をこれまで見たことがありません。

それでもネット上ではいろいろと推測がなされており、

「横田空域内には米軍の横田基地、厚木基地がある。

これら米軍基地がなくならなければ、横田空域が返還されることはあり得ない」

という意見があります。

でも米軍嘉手納基地と普天間基地を包含していた嘉手納ラプコンは返還され、

現在は国交省の管制官が管制を担当してるんですよね~。

また、「空域内には複数の飛行場があり、特に横田と入間は近接している。

このため特別なエリアを設けて一元管理が必要である」

といった意見もあります。

では、横田空域内にある主な飛行場(横田、厚木、入間)の発着数は実際のところ、どの程度のものなのでしょうか?


・横田基地

広大な空域を有するその本拠地たる横田基地には、米軍機が盛んに飛び交っている印象があるのですが、

横田基地の時間別発着回数は福生市の公式サイト内にデータが公開されており(下記リンク参照)、

それによればH28年度最も発着数の多い時間帯は、11~12時の2.7回で、それに次ぐのが10~11時の2.6回でした。

ピークの時間帯でも、1時間に2.7回。

最も忙しい時間帯が20分ちょいに1機という、なんだかとっても長閑な割合です。

H24年度からの5年間の平均は1日あたり29.5回、最新のH28年度の1日の飛行回数は29.8回でした。



・厚木基地

厚木基地は米海軍だけでなく海上自衛隊機の発着もあり、

ご存知の通り空母が入港しているか否かで、米海軍機の発着数が極端に変わります。

2003年と古いデータの数字だったと思うのですが、

厚木の週別発着数が以前ネットに載っていて、それによれば、空母が入港しているピーク時でも、

1週間の発着数は、海自、米海軍、それに当時は海兵隊機も含め、合計で最大で300弱程度でした。

多めにとって300として計算すると、1日あたり42.8回となります。


・入間基地

入間基地については、発着数のデータを見つけることができなかったのですが、

H27、H28年度の騒音発生回数についてのデータがあり、1日あたりの平均数が出ています(下記リンク参照)。

測定場所により、数字は6,251~17,036回/年とかなり差があります。

これは発着数ではなく、騒音が発生した回数であること、

最大値である17,036回の有効測定日数が363日であるなど、ややこしいんですが、

多めに見て、発着数を年間18,000回として話を進めます。

入間は地元との話し合いで、土日は原則として飛行しません。

それで、18,000回を260日で割ってみると、1日あたりの発着回数は、69.2回となります。


余談ですが、これら3飛行場の発着数を全国の空港と比較してみました。

国交省のサイト内に「平成28年度 空港別着陸回数順位」が公開されており(下記リンク参照)、

このデータと比較してみると、全114空港中、横田は39位、厚木は32位、入間は20位に相当します。

因みに横田は、釧路、佐賀、徳島空港と同クラス、厚木は、調布、奄美空港と同クラス、

入間は、広島、神戸、新石垣空港と同クラスとなっているのですが、

日本の空港は羽田が突出して多く、成田、関空等上位7位で全体のかなりの割合を占めており、

以下少ない数字がなだらかに右肩下がりで続いている感じです。

かなり甘めの見積もりですので、実際の順位はまだまだ下がるはずですので、

地方空港でも、これら3飛行場より発着数の多い所はたくさんある。ということです。


ただし、これら3基地の数字は飽くまで「平均」の数字であり、非常に忙しくなる時期、時間帯もあると思います。

入間は毎年11月の航空祭の前週からオイラの自宅(入間から10km北)上空も賑やかになります。

また厚木に関してですが、NLPはとうの昔にほぼ硫黄島に移りましたし、

今年は厚木ベースの艦載機の岩国移駐が始まりました。

もっとも、厚木の艦載機が岩国に移駐する一方で、自衛隊機含めて代わりに厚木にやってくる機体もあるらしいので、

騒音は激減すると言われていますが、発着数がどう変化するかはよく分かりません。


ともかくこれで横田、厚木、入間の1日あたりおおよその発着数が出そろいました。

それぞれ、29.8回、42.8回、69.2回という数字を、

かつて嘉手納ラプコンがあった沖縄のケースと比較してみます。

1日の発着数は、古いデータも混ざっていておおよその数字なんですが、

嘉手納基地:110
普天間基地:40
那覇空港:430

となっています。

嘉手納基地から那覇空港までは直線距離で約20km。

この範囲内に普天間も含めて上記3飛行場、合計580機を国交省で一括して管制を行っています。

一方、横田空域内についてですが、

入間基地から厚木基地までは直線距離で約44km。

この範囲内に横田も含めて3飛行場、合計141.8機を米軍が一括して管制しています。

嘉手納ラプコン(現・那覇アプローチ)内の3飛行場の580機と、

横田の3飛行場の発着数141.8機を比較すると、たった1/4に過ぎません。

羽田の発着数は、1日1,200便、ピーク時は1時間当たり80便、最短45秒に1機なのですが、

これを押し込める形で存在する横田空域の大きさは、最大で南北約300km、東西約135kmに及びます。

この発着数に対して、これだけ広大な空域が果たして必要なのでしょうか。

嘉手納ラプコン返還の実績、そして実際の発着数を比較してみると、

単に「米軍基地だから」とか、「近接しているから」とかいった理由では、

羽田の空域を狭め、これだけ広大な横田空域がどうしても返還できない理由になるとは、

オイラ個人はちょっと理解できません。

なにかもっと、別の尤もな理由があると思うのですが。。。





この記事の資料:
東京新聞記事/<すぐそこに米軍 首都圏基地問題>横田空域の返還求めず 羽田新ルートで政府
防衛省/(解説)横田空域 
入間市/入間飛行場周辺測定結果  
国交省/平成28年度 空港別着陸回数順位  

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コメント 2

an-kazu

アクセスに難アリと不評の成田空港の位置や意義は、
このあたりにありそうだと常々思っているワタシでする。


by an-kazu (2017-12-18 21:26) 

とり

■an-kazuさん
>位置や意義
横田空域と成田の位置関係を確認して、
モニターの前で「うおおお…」と唸ってしまいました(威嚇している訳ではない)。
an-kazuさんのこと、航空アナリストって呼んでもいいですか?

そういえば何年も前に馬さしさんが、
「成田と羽田を大深度リニアで直結せよ!」って記事に書いてたっけ。。。
当時は成田の空港としての機能がイマイチだったんですが、
現在は地元との協議を進め、徐々に能力が上って来ていますよね。
羽田がこのまま永久的に空域に難アリなのだとしたら、
成田との補完関係に本腰を入れるのもアリかもしれません。
by とり (2017-12-20 06:17) 

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